足取りは軽い。下手したらスキップになるか?
ヤバイ。鼻歌まで混じりそう。
今が、戦いの真っ只中だなんて忘れそうな勢いで気分は上昇し続けた。
Party*Party2
コンコン。
手の主の意志なのか、扉をノックする音も心なしか弾んだ音に聞こえる。
「アレ〜ン、いるさ?」
「どうぞ、開いてますよ」
扉を開けるラビを、笑顔でもって出迎えてくれたこの部屋の持ち主であるアレンは、壁に背をもたれさせるようにしてベッドの上に座っていた。
膝の上には、一冊の本。
「何読んでるんさ?」
アレンのベッドに乗り上げて、その開いたページを覗き込んでみる。
その中に、最近すっかり見慣れてしまった文字を発見した。
「ロミオとジュリエット?」
いつも世話になっているジェリーの誕生日を祝うために、ラビとアレンで演じることになった物語だ。
「ええ、台本だけだと色々端折られたりしてるでしょう?だから、この機会にゆっくり読んでみようかと思って…それに、こうして本を読んでみれば、もっと感情の機微が分かりやすくなるかなと思って」
あんだけ、この物語の主人公の1人である「ジュリエット」を演じることを散々渋っていたのに、今は真摯にそれに取り組もうとしている。
本当にまじめでまっすぐな子だと、ラビは思った。
そんなところも好ましい。
「面白いさ?」
「ええ、なかなか面白いですよ。そういえば、このロミオって、なんかラビに似てますよね?」
「え!?俺に!?ロミオが!?」
「はい。ロミオって、最初は別の女性が目当てでジュリエットの屋敷に忍び込んだのに、ジュリエットの方に惚れちゃうんですよね。惚れっぽいところなんてラビに似てると思いませんか?」
アレンが、まるで悪戯を企んで成功したときのような顔で笑い、上目遣いにラビを見る。
それはラビの鼓動を跳ね上げさせるには充分のアレンの表情。
それこそ「ストラ〜イクッ!!」と叫びたいところだったが。
「えぇっ!!俺はこれでも一途さ!」
「普通自分で言いますか?それに、いつも美人なお姉さんたちにストライクしてるラビが言っても説得力ないと思うんですが?」
まるでヤキモチともとれるアレンの発言と表情に、ラビの心音は更に跳ね上がる。
少し、自分に都合が良すぎるだろうか?
(くぅっ!抱きしめたいさ!)
「確かに、前はそうだったけど、今は−−−っ!!」
(しまった!)
つるっと、勢いに任せて口が滑ってしまった。
「今は?え?誰か、本命がいるんですか?」
「え?あ…や…」
言いたい。言ってしまいたい。本命はアレンなのだと、心の底から叫びたい。
でも未だ早すぎると、冷静な自分が囁く。
そんな焦る感情に翻弄されているラビには気づけなかった。アレンの表情に。