1 瞳の奥

「ねえ、俺の瞳見て」

任務のない昼下がり。
何もやることがなくて、部屋でただぼんやりしていた僕をラビが尋ねてきて、面白い本探してやるから図書室に行かない?って誘われて。
それで二人図書室のソファに並んで座って、僕はラビお勧めの冒険小説。
ラビは文字がびっしりでいかにも難しそうなタイトルの本を読んでいた。
僕たち二人以外には誰もいない図書室に、不意に聞こえたのはラビのそんな言葉だった。
ラビの薦めてくれた本は予想以上に面白くて、ついつい熱中して読みふけっていた僕はラビが何を言ったのか実はちゃんと聞いていなかった。

「ねえ、アレン。俺の瞳、見て」

それを察したのだろうラビは、もう一度繰り返し言った。

「え?突然どうしたんですか?」

それでも突然何の前触れもなく紡がれた言葉に、僕は戸惑ってただ横にいるラビを見る。

「いいから、俺の瞳…じっと見て」

もう一度そう言ってぐいっと顔を近づけてくるラビに、ついぎょっとして顔を引いてしまったけれど、あまりにも目の前にある表情が真剣なので言われたとおり瞳を覗き込んでみる。

「ゴミでも入ったんですか?」

「違うさぁ…」

がっくりと肩を落としたラビだったが、再び顔を勢い良く上げると僕の肩をがしっと掴んだ。

「もう一回、真剣に俺の瞳を見て、アレン」

「ラビ…」

言われるがまま見つめ続けていると、だんだん自分の中の熱が上がってくるような感じがする。
ラビとこんな風に見詰め合うことなんて、なかったからだろうかと思う。
なのに…。

「なんか感じた?アレン」

「…え?」

「なんか…伝わった?」

いつになく低いラビの声が何だかより一層、僕の中の熱を上昇させていく。

「ラビ…」

見慣れたラビの瞳。だった筈なのに、ラビの瞳の奥からなんか熱が伝わってきてどんどん熱くなる。
その内心臓までドキドキしてきた。
顔が真っ赤に染まってるんじゃないかって思うと、何だか無性に恥ずかしくなってきて瞳をそらした途端、ぎゅっと力強い腕に抱き締められた。

「伝わったみたい?アレン、俺の気持ち」

「ラビ…それって…」

「アレンが…好きさ…」

胸の鼓動が跳ね上がった。
そしていきなり自覚してしまった。自分もラビが好きなのだと…。





「あ、あの…ラビ?」

「ん〜何さ?」

ちゅ。
口付けしては、僕の瞳をじっと見つめる。
それを何回も何回も繰り返しては、嬉しそうに顔を綻ばせている。
恋人同士になってからと言うもの、暇さえあればこれの繰り返し。

「何でいちいち僕の瞳、見つめてくるんですか?」

正直物凄く恥ずかしいんだ。

「だって目は口ほどにモノを言うって言うだろ?」

「は?それが?」

「アレン恥ずかしがって言ってくれないだろ?」

「何をですか?」

全く意味の分からない僕の様子を見て、ラビはにやりと笑うと耳元まで口を近づけて言った。

「“好きだ”って」

僕が耳が弱いことを知っていてわざと低く囁く。

「ひゃあっ!」

耳を抑えて後ずさった僕を、ラビの腕が追い詰めソファの肘掛に押し付けられる。
潤んだ瞳に口付けられ、またじっと僕の瞳を。瞳の奥にある感情を読み取ろうとする。

「言葉の変わりに、アレンの瞳が教えてくれるんさ…」



「アレンも俺を好きでいてくれるってこと…」



「それで俺は、安心するんさ…」



ぎゅっと。まるで縋る様に抱き締めてくるラビを抱き締め返して、僕は思う。
瞳で伝えるのも良いけれど、たまには言葉にしようかなと。

「えっと、…えっと、ラビ…その…あの…す…」

「良いんさ…アレン。ちゃんと伝わってるから…」

やさしいラビの声に誘われるように顔を上げると、直ぐ近くにラビの瞳。
見つめればラビの瞳の奥に満ちた暖かな想い。



「僕にもちゃんと…伝わってますよ、ラビの気持ち…」



これからも、なかなか言葉に出来ない気持ち以上、瞳の奥に満たすから。
どうか見つめていて。

ウェブ拍手ラビアレVer第1弾SSでした。
「目は口ほどにものを言う」と言う言葉があるじゃないですか、確か…。
それをSSにしてみました。
しかしただの甘甘ですな☆

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